日々雑感

日々思うことの備忘録です.

エスカレータ

最近,いろいろな駅でエスカレータの増設工事をやっている.一方で,エスカレータや階段の前で人が列をなしているのを見かけることも多くなったような気がする.

具体的な数字を調べたわけではないが,ざっとした感覚では,エスカレータを設置すると同じ場所に階段があったときと比べて,同じ時間でさばける人の数は減るのではないか.

そう思う理由はいくつかある.一つは空間の効率がおちること.エスカレータは両側に枠やベルト設置のスペースがありデッドスペースが大きい(このことは,もともとあまり幅が広くなかった階段に1列乗りのエスカレータが設置されたときによく思う.残された階段スペースがとても狭くなるから).また,ステップの奥行は階段の奥行より広く,ステップの段数が階段より少ないのに,多くの人はエスカレータに1段飛ばしで乗る(前の人が立っている段のすぐ次の段に乗らずに,その次の段に乗る)ので,効率が悪い.これらの効果が相まってエスカレータでは階段よりも人を収容できる密度が低い(密度が低い方が安全になるのは確かだが).さらに,エスカレータを使うと階段を使うよりも一般には上り下りにかかる時間が長くなるので,単位時間あたりにさばける人数も減ることになる.いま,鉄道会社はエスカレータ上で歩くことを推奨していないので,もしエスカレータの上で全員立つようになると,ますます単位時間にさばける人数が減少することになる.

何よりも,エスカレータは上り下りが専用なので,階段のように乗客の数に応じた上りと下りの適応的な切り替えができない.電車から降りてホームから離れたい人が集中したとき,ホームへ向かうエスカレータがいくらがらがらでも,そのスペースを有効に使うことができない.階段だったら,同じスペースを上り下りで適応的に切り替えて利用できるのに,である.いままで階段だったところにエスカレータを設置すると,人の列が長くなるのは,このようなバッファ機能の喪失によって階段まで混雑するようになるからではないだろうか.

エスカレータを増設するなというわけではないが,階段の良さとエスカレータの良さのバランスをうまくとって設計してもらいたいところである.