日々雑感

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読書録:測りすぎ-なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

「測りすぎ」というタイトルをみて,これはいったい何について書いた本だろうと思うが,これは,学校での教育や大学での研究,医療や警察などの公共の現場に定量的評価を持ち込むとどのような弊害が生じるかを明快に論じた本である.

わかりやすい例をあげれば,多様な機能を担っている組織で特定の定量化指標を定めるとその指標に定められたものだけが優先されてしまうようになること,また,仮に多数の機能についてそれぞれ定量化を行おうとすると,そのデータの取得のために本来は不要な人的・時間的コストがかかるようになることといった具合である.

世の中,特にビジネスの世界では定量化することの重要性が説かれるが,定量化がうまくいくにはそれなりの条件がある.著者は,定量化(測定)を行ったときに意図していなかったよくないことが起きているにも関わらず,測定が重要だと信じることを「測定執着」と呼んでいる.そして,測定執着が生じる背景的要素として,次の3点をあげている.

  1. 個人的経験と才能に基づいておこなわれる判断を,標準化されたデータ(測定基準)に基づく相対的実績という数値指標に置き換えることが可能であり,望ましいという信念
  2. そのような測定基準を公開する(透明化する)ことで,組織が実際にその目的を達成していると保証できる(説明責任を離している)のだという信念
  3. それらの組織に属する人々への最善の動機付けは,測定実績に報酬や懲罰を紐づけることであり,報酬は金銭(能力給)または評判(ランキング)であるという信念

本書の議論はきわめて合理的で読みやすく,あっという間に一冊読んでしまえる本である.学校や公共機関の評価に携わっている人にはぜひ読んでもらいたい.

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